−５−
　それから二ヶ月後のある日、船体の整備作業の間、ネットを飛び交うニュース・シャワーをあびていたオレは、興味深いニュースに出くわした。
　それは銀河の中心区域で新たに見つかったホワイトホールから奇妙な電波が出ているのが発見されたと伝えていた。そして、解析の結果、それは次のようなメッセージであることことが判明したというのだ。
「シュニケラフ・万歳・貫いて・勇気を・心ある・・・年代記よ・・・ありがとう」
　オレは初めて彼女の歌を聴くことができた。
　彼女は、あの時代でも空に向かって自分の歌を唄い続けたのだ。その強力な思念波は宇宙をさまよい、ブラックホールに吸い込まれ、この時間軸のこの時代に、今たどり着いたのだ。
　偶然というより、奇跡という言葉がふさわしかった。しかし、何よりあの時代で唄い続けた彼女の意志こそが、オレにとっては奇跡だった。
　オレは、彼女の歌を自分の記憶保管領域に七重にコピーして刻み込んだ。
　四億年の時を駆け上がってきた彼女の歌は、ただ時間をつぶすだけのオレの旅を陳腐に思わせた。どうすればこのオレの旅がその汚名を返上できるか、これからゆっくり考えなければなるまい。おそらく四億年もはかかるまい。きっと答えは見つかるに違いない。オレは意味もなくそう確信した。



終