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 それから二ヶ月後のある日、船体の整備作業の間、ネットを飛び交うニュース・シャワーをあびていた俺は、ある興味深いニュースに出くわした。
 それは銀河の中心区域で見つかったホワイトホールから奇妙な電波が出ているのが発見されたと伝えていた。そして、それを解析した結果、不完全ながら次のようなことらしいことが判明したというのだ。

「シュニケラフ・万歳・仲間よ・貫いて・勇気を・心ある・年代記よ・ありがとう」

 俺は初めて彼女の歌を聴くことができた。
 彼女は自分の言葉通り、あの時代でも空に向かって自分の歌を唄い続けたのだ。宇宙をさまよい偶然ブラックホールにまで届いたその歌は、この時間軸のこの時代に今たどり着いた。偶然、というより、奇跡という言葉がふさわしかった。しかし、あの時代で唄い続けた彼女の意志が、俺にとっては何よりの奇跡だった。
 俺は、彼女の歌を記憶に刻み込んだ。彼女の歌は、四億年の時をへだててなお俺に影響を与えた。
 唄い続けた、彼女の強さを、俺はいつまでも忘れないだろう。






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