脊髄性進行性筋萎縮症(SPMA)という病名を知っている人は少ないと思う。私自身、自分がいわれるまでは聞いたこともない病名だった。
似たような病気だが、ALS(筋萎縮性側索硬化症)という病気の方が少し知られているかもしれない。メジャーリーグの有名選手だったルーゲーリック、あるいは宇宙物理学の研究で有名なホーキング博士の病気といえばピンと来る人も多いのではないか。
どちらも全身の筋肉が萎縮し(正確には全身ではないが)筋力が低下していく病気である。
筋肉や運動の障害の原因は大きく分けて
1,脳に障害がある場合
2,運動神経に障害がある場合(神経原性)
3,筋肉そのものに原因がある場合(筋原性)
に分けられる。
SPMAもALSも神経原性疾患のうち「運動ニューロン疾患」と呼ばれるものである。
運動ニューロンとは、骨格筋を支配している末梢神経の母体である脊髄前角細胞、さらにその脊髄前角細胞に随意運動のための刺激を送ってくる大脳皮質の運動神経細胞(その神経線維は錐体路、脊髄では側索を通る)を言う。
もう少しわかりやすく言うと、随意筋(自分の意思で動かすことができる筋肉)を支配する神経である。
さらに、上位運動ニューロン(錐体路、皮質脊髄路)と下位運動ニューロン(脊髄前角細胞以下の末梢神経)に分けられ、下位運動ニューロンのみが障害を受けるものがSPMA、上位下位ともに障害を受けるものがALSである。
またSPMAはSMA(脊髄性筋萎縮症)の病態の一部であり、そのうちのさらに一部はALSと重なる部分がある。このあたりの細かい分類は説明する人により多少違っていたりするが、専門家でもないので細かいところは気にしなくても良いだろう。(^_^.)
大まかに図解で説明すると下記のようになる。

狭い意味での脊髄性筋萎縮性症とは、乳幼児〜小児期に発症し第5染色体に病因遺伝子を持つ劣性遺伝病で以下の三つに分類される。
・1型は乳児期の早い時期に発症し、多くは2才までに死亡。重症型。ウェルドニッヒ・ホフマン病ともいわれる。
・2型は1型より発症は遅く病気の進行も緩やか。早期に死亡することはないが、起立や歩行は生涯不可能とされる。中間型。
・3型は小児〜思春期にかけての発症で進行も緩やか。歩行は可能だが、次第に転びやすいなどの症状が出てくる。軽症型。クーゲルベルグ・ヴェランダー病ともいわれる。
球脊髄性筋萎縮症は、ケネディー・アルター・サンク病ともいわれ球麻痺症状を併発する。
球麻痺症状とは、嚥下(飲食物を飲み込むこと)や口のまわりの筋肉に障害が現れる。
そのため誤嚥により飲食物が肺に入り、肺炎を起こし死亡することもある。予防のためには飲食物にとろみをつけたり、口から食事をとることができない場合は鼻から管を通し医療用の流動食をとるなどする。(経鼻経管栄養という)
主として20代以降の成人の、男性のみに発症する劣性遺伝の病気とされている。
成人発症の脊髄性進行性筋萎縮症は、小児期発症のものと比べ進行は緩やか。ALSとほぼ同一の疾患とされているが、ALSが上位運動ニューロンにも障害が現れるのに対し、下位運動ニューロンのみの障害という違いがある。
そのため当初はSPMAと診断されても、ALSに進行していく場合もある。
病気の原因については、遺伝性のもの以外は不明とされている。
現在のところ、症状の改善や進行を止めるための有効な治療方法は見つかっていない。
手足の筋肉が痩せて力が入らなくなり、ものを飲み込むことも難しくなり言葉の呂律も回らなくなってくる、やがては呼吸機能にまで障害が及んでくる神経難病の代表的なものの一つである。
運動神経だけが障害を受けるので、感覚や意識の障害は起こらない。
日本では5000人前後の患者がいるとされ、紀伊半島に発生率の多いことから地域的要因も疑われたがはっきりせず、原因は不明、有効な治療法も現在のところ見つかっていない。
平均的には発症から3年から5年で死亡することが多いとされているが、ホーキング博士のように数10年生存しているケースもあり20%前後は10年以上生存するとされている。
主な死亡原因は呼吸筋麻痺による呼吸停止、球麻痺による気道閉塞(食物や痰による窒息)、誤嚥性肺炎などである。最近では特に人工呼吸器を着けてからの予後が改善されてきている。
似たような症状の病気にCIDP(慢性炎症性脱髄性多発神経炎)というのがある。私が当初疑われた病気だ。
人の体には、外部から進入してきた細菌やウィルスから守るために免疫機能がある。それを利用したのが予防接種などだ。だが本来そういった外部からの進入物を攻撃するはずの免疫が、何らかの理由で突然自分の体を攻撃するように変わってしまうことがある。それがこの病気だ。いわば「免疫スカイネット」状態だ。わかる人にはわかると思うが・・・。(笑)
神経は電線のようなもので、周りを絶縁体で覆うことで脳からの命令の信号を筋肉に伝えている。その周りの覆いが破壊されることにより運動神経が進行的に欠落していくのである。
治療法としては、その悪者になった免疫を出来るだけ排除することだ。ステロイド療法、血漿交換療法、そして最近主流になったガンマグロブリン療法などがある。
ガンマグロブリン療法とは、ヒト免疫の血液製剤を大量に投与することで悪者の免疫を減らそうというものだ。副作用も比較的少なく効果も大きいとされる。
効果があれば進行は止まり症状も多少改善があるが、根本的な治療ではないので再発も多く、定期的に治療を繰り返すことが多い。
その急性的な病気に当たるのがギランバレー症候群で、数日から数週間(1ヶ月以内)のうちに症状のピークを迎える。重症な場合には呼吸障害などで死亡することもあるが、完全に治る例も多く再発も少ない。進行が速いので、いかに早く治療を開始できるかが重要になる。