「……だってさ、あんまりじゃない」
「何がだよ」
「そりゃ私なんてまだまだ危なっかしいのかもしれないけど。でも私だってこれでも頑張ってるんだよ。それなのに九郎さん、頭から全否定なんだもん」
 確実にそうだろうと分かっていたが、望美の口から飛び出る名前に将臣は改めて内心で嘆息するのだった。もうこの名を悪口雑言と共に幾度耳にしたのか、数え上げるのも阿呆らしい。耳タコだ。
 加えてその人物と自分は対とか何とか言われて、当人に対しても多少の付き合いがない訳でもなかった。軽く話した限りでは、見事に竹割りな気性が面白い奴だったと思う。反りが合わないより合うほうが楽に決まっているし、同行している間くらいはうまくやっていければいい。
  つまるところ将臣は、幼馴染と対の間で板ばさみか通訳かの役割を要求されているらしかった。面倒くせえとは思うものの、放っておくとこの幼馴染もあの対も、どんな方向にこじれるか分からないのだから仕方ない。一応神子と八葉とやらなんだから、険悪なのは周りが被害を受けるだけだろう。
「まあ、どうせまたお前が無茶なこと言い出して、あいつがそれに猛反対してるだけなんだろ」

 

(【傍観者の所感・壱】より)

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