| 座敷の隅で一人、九郎は固く目を閉じていた。 耳に入る楽しげな女の嬌声、白粉と酒の匂いとが混じる。 いくら男とはいえ、女を金で買う事は生真面目な九郎には出来ない。 尊敬する兄の従者として同席してはいるが、誘いの声には耳を貸さなかった。 傍らに人の気配がして、うんざりとしながら瞼を上げた。 「あの」 「何だ」 「お白湯をお持ちしました」 鈴の音のような声に視線を上げれば、質素な着物に身を包んだ少女。 「下働きの娘か」 「いえ、見習いです」 「見習い!? お前、客を取るのか」 「いえ…まだ」 驚いた九郎に、少しだけ睫毛を伏せて笑う少女。 「…いくつだ」 「え?」 「いくつだ、と聞いている」 「はい、あの…十七を数えます」 「十七…親はどうした」 何気無く尋ねた言葉に、少女は膝の上で拳を作る。 「…おりません」 「何故」 「殺され、ました」 「そうか…すまない、嫌な事を思い出させた」 「身よりがないから、此処に居るのか」 「はい」 「そうか。ならばお前は俺が買おう」 「えっ…」 「何、恐がらなくても良い。子供に手を出す趣味はない」 それは九郎の本音だった、少なくともこの時は。 「話し相手になってもらうだけだ」 「私、まだ見習いです…」 「此処の主人には話をつけてやるさ。お前も良く知らぬ男に抱かれたくはないだろう?」 触れた髪は柔らかく滑らかで、指に心地良い感触を与える。 「名は」 「瑠璃と申します」 「そうではなくて、お前自身の名だ」 「望美…です」 「望美か。良い名だな」 何気無く褒めた言葉に、少女は瞳を輝かせる。
続 |
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**ひとこと**
フリー配布でかっさらってきた挙句、惚れ込んで続きを書かせてくださいと土下座した原因となった頂きもの。
私なんぞがコメントできないですよ!! 素敵でしょう!!?? (握りコブシで荒・鼻息)
光月さまその節は本当にありがとうございます、大変ご迷惑をおかけしました(笑)。
つ、続き…この話に恥じないようにムード出しつつ頑張ります…。(そちらは遙かSS置き場にて)