| たまには何かしようと思っても、上手くいかないことばかり。 要領の悪い自分が本当にイヤになる。
「……う〜」 自室のベッドに仰向けに寝転がり、望美は唸っていた。 「いっぱい、考えてたのに……私のバカ」 どう考えてもこちらに馴染むのに素晴らしく手間隙かかりそうな彼を、なかば強引に拉致ってきたのが去年の冬。 できればもう少し進展したいなぁ、と可愛らしい欲が出るのは、年頃の乙女と呼ばれる年代であれば、望美にとっても無理からぬ願いではあった。 何しろテキは普通の人間ではない。こちらの常識が通じない。いろいろな意味で。 嬉しいのなら、そう言ってほしい。 そのためにも今日は、絶好の口実……もとい、機会だったのに。 「なんで、こういう時に限って風邪ひいちゃうかなあ」 秋から冬へ移り変わる季節。暦の上ではもう冬になった時期。 「……九郎さん、ちゃんとメール、気づくかな」 電話ならば直接口頭で伝えられるから、行き違いの心配がないのは分かっている。 「───ほんとなら、ちゃんと言いたかったのに……」 病で気弱くなっているせいか、望美の思考は沈みがちだった。
うとうとと、いつの間にか浅い眠りに落ちていたらしい。 「……ぉか、さん?」 言ったはしから、望美は違和感を覚える。 「誰が母御だ」 「───!!??」 聴こえてきた声に、望美の意識にかかった霞は一気に消えた。 「な、な───九郎さんっ!? なんでここにっ……って言うか、お母さーん!?」 パニック状態で身を起こそうとする望美を、九郎はやんわりと押し留める。 「落ち着け。母御は買い出しに行かれているゆえ、俺が留守居を仰せつかった」 「はあ……じゃなくて、なんで九郎さんがうちに来てるんですかっ!!」 「お前が連絡を寄越したんだろう。めーるで、出かけられない、と」 確かにそうだが、理由など書かなかったはずだ。心配させてしまうのがイヤだから。 「……一目だけでも、と思い、こちらまで来たんだ。母御にお会いして、理由が分かった」 「……九郎さん」 「そう重い病でははなさそうだが───大事ないか?」 ああ。 望美は泣きたくなった。 九郎はちゃんと、一番大事な部分を間違えることなく、自分を想ってくれている。 「う〜〜〜……」 ぐずり始めた望美を、九郎は熱の所為で身体がきついのだろうと思った。 「戻られたな。喉越しのよいものでも出していただくといい」 踵を返そうとして、ぐんと何かに引っ張られ、九郎はたたらを踏んだ。 「望美?」 「あの……もう、帰っちゃう……んですか?」 舌のよく回っていない声は鼻にかかり、聴いたことのない甘さを含んで。 「……る、留守居だからな。お前の顔を見られたし、長居も無礼だろう」 「…………」 九郎は言い出したら聞かない律儀なひとだ。望美もそれはよく知っている。 だったら言えるのは、今しかなかった。 「あのね……九郎さん、ちょっと、耳貸してください」 「耳? 何故だ?」 「おねがい」
考えて考えて、たくさん計画していたことはあったの。 だから、ね。 だから今は、このことばを。
「───ハッピーバースデー、九郎さん」
あなたの上にたくさんのしあわせがふりそそぎますように。
了 |
**反転コメンツ**
2006年九郎ハピバ記念の無印ED後設定。とにかくお約束で甘い話にしたかった。
神子はさんざん一人で空回って、挙句にとても不器用だったりすると非常に萌えます。ドジっ子大好き。
…実はこれは後日談を某ページにて書く予定なんですが(爆笑)。こ、このままほのぼので終わらせたほうがイイですか?
まあとにかく九郎さんお誕生日おめでとー! この愛すべき史上最強のヘタレ大魔神め!!(祝ってないよ)