| その口からそんな言葉を聞くだなんて、ほんとうに不意打ちすぎて。
「……え……?」 望美の頭はいま何を言われたのか、咄嗟に理解できなかった。 帰りたいと願っていた仲間たちがその願いを叶えられるのは喜ばしく、けれど離れたくはないと軋む自分の我侭な想いを持て余して、ひとり庭に逃げ出していたのに。 分が悪い、と思う。 「……ごめんなさい、泣くなんてずるいですよね」 だからもう放っておいてくれ、と言外に匂わせた望美の葛藤にも気づかない様子で、目の前に仁王立ちになっている相手は。 九郎は言い放ったのだ。 「お前が好きだ、一人の女性として」
二人して黙りこくったまま、有川家の夜の庭にて見つめ合う。 ええと。九郎さんが好きって言った。 意中の相手に嬉しい言葉をかけてもらった時の、この見事なまでの自己防衛に徹した反応は、実は彼女の幼馴染みの片方とよく似ている。因果応報という言葉どおり、鈍い相手を好いた困難というものは、望美もこれまでにお釣りがくるほど味わっていた。 何も言わないままの望美をどう解釈したのか。 「……それだけ、お前に伝えておきたかった。悪かったな、急に」 「あ……」 そのまま踵を返される。 ───また、置いていかれる。 「…………っ!!」 どん、と九郎の背に衝撃が加わった。しがみついてきたぬくもりと柔らかさに、九郎の眉がきつく歪む。 自分から振り払える、訳がないのだ。 迷いに迷った挙句、結局九郎の手は望美の腕を引き剥がすことをせず、自分の腰の辺りに回っている小さな掌に、そっと重ねられただけだった。 「───どうした」 九郎の声は静かに響いたが、望美にほんの少しだけでも余裕があれば、その奥に隠しきれない動揺と苦悶を感じ取れただろう。 滅多にもらえぬ、至上の言葉。 「九郎さん……っ」 「……望美?」 落ち着かせるように、合わせた小さな掌を、大きな掌がきゅうと握りこむ。 ───すき、です。
飾った言葉などなくていい。理由なんてつけなくていい。
了 |
**反転コメンツ**
迷宮九郎EDのあのトドメ台詞に関しての衝撃を神子視点で(笑)。いろいろな意味で度肝を抜かれた。
いや、あの状態でアレ言っちまうのは反則だろ九郎。無印EDでも十六夜EDでもまともに言えなかったくせに!
九郎限定禁句として(神子本人に対して口に出して)「好き」「愛してる」があったんですが、もう解禁でいいってことですか御曹司。
ヒノエ辺りなら無印の初対面で言えるような台詞、ゲームソフト3本丸々かけてよく言えたな九郎(爆笑)!!