| そっと伸ばした指に、音も無くとまる。 不用意に動けば傷つけてしまうから、やわらかい羽をただ眺めて。 やがて翔びたとうとするのを、もう少しだけ自分のもとに留まっていてほしくて、そうっと掌の檻につつみこんだ。
夢路をさまよう少女の瞳が時折ふと開かれることに、九郎は気づいていた。寝惚けているのであろうその輝きはまさに夢心地で、明るい陽の光のもとでの生気は鳴りを潜め、とろりとした甘さをふんだんに湛えている。 「まだ寝ていろ」 そう言って額ごと瞼に掌を当ててやれば、大抵はすぐにぱたりと寝入ってしまう。 まあ、いい。それは望美が起きてから、甘んじて受ければいい話だ。 「眠らないお前が悪い」 喉元に唇を這わせてささやけば、くすぐったいのかきゅっと首をすくめた。自分のほんの些細な仕草にさえ初々しい反応をくれることに微笑み、とっくの昔にゆるんだ単の裾をもう一度乱していく。 「お前はどうしてここまで、俺を惑わせるのが上手いんだ?」 白い肌がぴくりと動くのは、問いに答えるためではなく。 「望美……」 気まぐれな胡蝶は、ひらひらと九郎の周囲にまとわりつく。 ───はやく目覚めてもらわなくては、堪えるのもつらくなってきた。
「……っ、ん、ぁ」 眠りの続きから引き戻された少女は、まともな思考が戻らないままにちいさく喘いだ。 「くろ、さ……? っひぅ!」 問う声は少女の急所を攻めることで封じる。粘った水音が熱いのは、どちらの熱か。 とても危うく、そして美しい。九郎に手折られるための花、九郎のためだけに舞う胡蝶。 力の限り抱きしめれば、きっとこの少女は壊れてしまう。 「───望美」 「っあ……!」 とろりとした熱は、もうどちらのものか分からない。
不用意につかんだら、お前の羽は千切れてしまう。
了 |
**反転コメンツ**
舞台未定でほんのちょっとだけお色気系。寝込みを襲ってますがまあ両思い状態ってことでスルー。
でもゲーム展開の中では九郎は手を出せないんじゃないかと思っとります。だってそれどころじゃないもん切羽詰まりすぎてて。
じゃあED後ってことになるんですけど、あの世界で閨とか御簾とか単の白襦袢とかも萌えなんです(力説)。
九郎は一生着物でいいよもう。現代服が似合わないとは言わないけど着物が一番似合うよ。