| 「神子様、皆様お揃いですわ。その中でも特に、神子様にご挨拶したいとおっしゃる方がいて……。お通ししますね」 私はそう神子様にお伝えして、自分は控えの間に下がりました。
まずは天真殿がいらしてますね。 「よう、藤姫。今までいろいろ世話んなったな。……あかねに、逢っていいか?」 「はい、どうぞ。神子様をお励ましあそばせ」 京より神子様方の世界へ帰られる力を得る為に、最後の決心を神子様に聞いて頂くおつもりのご様子です。 「俺はあっちに戻ってるよ」
入れ違いにいらしたのはイノリ殿です。まぁ、今日も随分と元気がよろしい様ですわね。 「藤姫っ! あかね、居るよな!? 逢わせてくれっ!」 「はい、どうぞ。神子様にその勇気を分けて差し上げてくださいまし」 神子様のことを敬うというよりは、「仲間」として神子様を大切に考えてくださった方ですから、きっと大丈夫ですわ。 「じゃな、藤姫っ」
見送っていたら、続いて駆けてこられたのは詩紋殿です。この方にしては珍しゅうございますわね。 「藤姫! あのね、ボクどうしても、あかねちゃんと話がしたいんだ。ちょっとだけでいいから、お願い!!」 「はい、どうぞ。神子様の不安も、詩紋殿ならば鎮められましょう」 この方も神子様の世界からご一緒された方。鬼を外見で差別していたのは私たちの方だと、気づかせてくださった方です。 「ありがとう、藤姫。ボク、戻ってるね」
流石に疑問を感じ始めていたら、今度は泰明殿がいらしてます。 「……神子に逢わせてほしい」 「はい、どうぞ。陰陽の力と知識は、今の神子様に何よりも必要ですもの」 普段は表情というものがほとんど伺えない方なのですけれど、何となく、いつも以上にお顔が強ばっている様な……? 「邪魔をした。戻っている」
……って、今度は頼久ですの!? 一体どうしたというのでしょう、八葉が次々と!! 「藤姫様……この頼久、伏してお頼み申します。神子殿に一目なりとお逢いいたしたく」 「はい、どうぞ。神子様をお守り申し上げること、頼みますよ」 がちがちに緊張してますわね。確かに頼久は真面目な性格ですけど、これはちょっと行き過ぎの様な気が……。 「ありがとうございました。戻らせて頂きます」
次にいらしたのは鷹通殿です。随分と悲壮な顔付きをなさっておいでですわね。 「藤姫、神子殿にお目通りを願いたいのですが」 「はい、どうぞ。鷹通殿のお言葉で、神子様も落ち着くことができましょう」 動作がカクカクしている様に見えるのは、私の気のせいなのでしょうか?
転ばれないとよろしいのですけれど。 「ありがとうございます、藤姫。これで思い残すことはありません」
永泉様まで……。帝に御報告に上がられたのではなかったのでしょうか? 「帝には藤姫に謝辞を伝えよとのお言葉です。神子に、逢ってもよろしいですか?」 「はい、どうぞ。お言葉勿体のうございますわ、永泉様」 女性と見まがうお顔立ちなのですが、何故だかきりりと目元が引き締まっている感じで……少々、別人の様ですわ……。 「ありがとうございました。私はあちらへ戻っておりますね」
……ここまできたら、いらっしゃると思ってましたわ。最後のおひとり、友雅殿です。 「やあ、藤姫。我らが至宝の神子殿にお目にかかりたいのだがね」 「はい、どうぞ。神子様のお気持ちをほぐして差し上げてくださいませ」 相変わらずな口調ですけれど、神子様への忠誠は本物らしいので、私も以前の屈辱を許して差し上げることにいたしましたの。 「ありがとう、藤姫。私は戻っているから、また呼んでおくれ」
「……神子様? あの、お邪魔してもよろしいでしょうか?」 「あ、藤姫〜。もう、みんなしてどーしちゃったのかなぁ……次々に来るんだもん」 神子様はうんざりと脇息にもたれかかっていらっしゃいます。 「あの……。皆様、神子様に何をお話しなさったのです?」 「最後の闘いだから連れていってほしいって……そんなの、全員連れてける訳ないじゃない〜〜〜!!」 ころんと倒れられてしまいましたわ。 「神子様……あの、それでは……八葉全員との絆を、徹底的に深めたということ……?」 「そんなの知らないよ〜。私はただ、息抜きに誘われたら断らなかっただけ!」 「…………」 ……流石、ですわ。 「神子様。私、神子様の様な女性になりとうございますわ。神子様は私の目標です!」 「へ?」 しっかと神子様のお手を取って、私は力説してしまいました。 私はにっこりと微笑みました。 「神子様。今いらしたのは、神子様との絆の深い方です……」
了 |