| 淡く、淡く。 それは、とてもちいさな。 今にも消えてしまいそうな……だけど決して消えない。 淡き花の香。
狂ってしまえばいいと思っている。 「アリオス、あのね」 馬鹿な女。 ───どうしようもなく俺を包み込んでしまう、その淡いひかり。 振り払えない。目を背けることすらできない。 馬鹿な女。 ───どうしようもなく、愛しい女。
なぁ、知ってるか? 今まではそう思っていた。 花の香りがする。
ヤメロ ヤメテクレ
相容れないんだ、最初から。 「アリオス、アリオス」 その白いうなじにつと指を伸ばす。節くれだったそれは、肩先で甘く揺れる亜麻色の絹糸に阻まれて、つややかな感触を俺に伝えた。
この指先にほんの少し力を込めれば。 ただそれだけで。 この少女は。
「アリオス?」
───そのちいさな花は、ただそこに在った。
「……何だよ?」 「え、あ、えっと。なんだかアリオスに見られてるような気がして……」
───ただ在るだけで、やわらかなひかりを放っていた。
「は? なんで俺がお前の間抜けヅラを見なきゃならねぇんだよ」 「……んっと……気のせい、かな?」 「当たり前だろ」
───ただそこに、在るだけで。泣きたいくらい、やさしいひかりを。
「……ツラに用事はねぇがな、動くなよ」 「え?」 「髪。デカいイモムシがひっついてやがるぜ」 「─────────」
───摘むのをためらうくらい、のびやかに。
「っいやあぁぁあああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!!!」 「ぶっ……ほら、動くんじゃねぇよ、取ってやるから」 「やっ、アリオス、アリオス!! 早く取ってええぇ〜〜〜〜〜〜!!」 こいつは見事に真に受け、俺の腕にがっしとしがみついてきた。触れ合う感触から全身で感じ取る。少女の、あたたかさを。
なぁ、アンジェリーク。教えてくれよ。
この感情を、なんと呼べばいいのか───……。
Fin. |