三姉妹のある日常:春編

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第2話



過ぎたことを責めても仕方が無い。

クギリがそう言って、一時間弱のお説教は終わった。

その間、シサはずっと正座だったのでとても足が痛い。

(しっかり責められてる気がするよぉ…)

と、思ったが決して口に出さないのが良き姉妹の勤めである。

同じ正座のクギリは、何事も無く立ち上がった。痺れていないらしい。

ナカミは、すでにクギリに寄りかかって眠っている。

クギリが立ち上がると、そのままくてっと横になってしまった。

「・・・・」

前に足を抱えてうなっているシサ。

後ろに気持ち良さそうに寝ているナカミ。

状況を鑑みて、クギリは決断を下す。

「・・・そろそろお昼に・・・」

その瞬間、ナカミが跳ね起きた。



一方その頃。

山林で、小さな茂みが微かに動いた。

「目標、現地点ニ静止。」

「休息ヲ取ル模様・・・監視ヲ続行。」

その硬質な合成音声は、それだけを言って再び沈黙した。



(・・・?)

シサは、ふと背中に視線を感じた。

今は三人でお弁当を囲んでいるので後ろには誰も居ないはずだ。

目線だけで斜向かいに座るクギリを見る。

それに気付いたクギリも、シサを見た。

「おにぎり、塩が少し濃かったかしら。」

「え?」

重箱の影で、クギリの指が円を描いているのが見えた。

合わせろ、と言うことらしい。

「始めのうちに、思いきりお水に塩を入れてしまったでしょう?」

「あ、分かっちゃった?」

「上の段に入っていたのと塩加減が違うもの。」

分かるわよ。クギリは少し目を細めて言った。

微笑んでいるようにも見えるが、目の光が少し鋭い。

「これからは気を付けてね。」

「うん。」

クギリはやはり「視線」には気がついていたらしい。

シサも二重の意味を込めて頷いた。

「ねえ、卵焼きもう無いの?」

と、ナカミが言った。

「え?」

シサが重箱を覗くと、あらかた食べ尽くされている。

「あ!!ナカミ!全部食べちゃったの!?」

「だって〜美味しかったから〜」

「まだ食べてないのに!!」

「早い者勝ち〜」

「うがー!」

「もげー!」

こうして弁当争奪大バトルが勃発した。

クギリは、密かに頭を抱えた。



一方その頃。山奥では。

「騒動ガ発生シタ模様。姉妹喧嘩ト思ワレル。」

合成音声はなおも状況を観察している。

「ツーコトデ、異常ナシ。」

「そうかなあ・・・。」

「たのしそう・・・。」

「おいしそう・・・。」

「黙レ諸君。」

なんだか、こちらも賑やかだった。



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