卜ロント・ダラー:カナダ・トロント
企業のマーケテイング活動と社会貢献とを同時に実現させる新しい試み
○導入の背景
オンタリオ湖の北西岸に位置するトロントは人口約400万人の町。マイケル・リントンの始めたLETSがカナダでは伸び悩んでいたため、よりビジネス関係者が参加しやすいようにするため、イサカアワーやフランスのSELそしてメキシコのトラロックを参考にして、1998年の12月にトロント・ダラー・プログラムが創設された。
トロント・ダラー導入の目的は次の四つ
@地域経済を活性化して新規のビジネスをサポートする。
A地域内で資金を循環させる。
Bコミュニティヘ意志決定権を取り戻す。
C新規の雇用機会を生み出す。
ジョイ・コガワ:
トロントダラーを動かす中心人物。日系二世作家。第二次世界大戦中に日本人が味わった経験を克明に綴った『OBASAN』(『失われた祖国』中公文庫)という小説を1982年に発表し、文壇の注目を浴びた。作家として成功したあとでも、社会的弱者に光を当てたいという気持ちを抱き続け、特に住宅や雇用、ホームレスなど、トロントが抱える都市間題を解決したいという強い欲求があった。
90年代初頭にコモックスバレーのマイケル・リントンを訪ね、地域通貨の手ほどきを受け、その後、かつて住んでいたバンクーバーで実際にLETSの導入にも携わった。さらに彼女はアメリカ・ニューヨーク州イサカ市における地域通貨を参考にしながらトロントダラーの立ち上げを構想した。
大都市トロントで地域通貨を成功させるためには民間企業の参加が不可欠と考えたジョイは、500店近い地域企業が参加するまでに成長したイサカのの方式に学び、紙幣方式による地域通貨の導入を考えた。
市長のメル・ラストマン:
1999年12月、トロントダラーの運用開始を記念する式典では、市長のメル・ラストマンが高らかにトロントダラーの誕生を宣言した。ぞの後も、トロントダラーの地域社会に対する貢献を称える感謝状を市長名入りで授与するなど、トロントダラーの活動に継続的にエールを送ってきた。
ロイ・クサノ:
大手法律事務所ベイカーアンドマッケンジーの弁護士。トロントダラーの法律面の整備や、運営主体となるNPO「トロントダラー・コミュニティ・プロジェクト社」の創設に際して具体的なアドバイスを提供した。もちろん費用は無償、ボランティアとしての協力である。
○システム-110%ソリューション
@顧客は両替所でカナダドルをトロントダラーに両替する。
1対1、100ドルを支払えばトロントダラーを手に入れることができる。
交換額の10%(この場合であれば10ドル)は地域のNPOに対する寄付(コミュニティ事業支援基金)に充てられる。

・新規個人参加者は1カナダ・ドルを1トロント・ダラーに交換することにより参加できる。
・新規ビジネス参加者に対しては25カナダ・ドルの参加料を徴収する。
・コミュニティ機関・慈善団体は100カナダ・ドルを110トロント・ダラーに交換することができる。
A顧客はトロントダラーを利用して、参加企業で商品を購入することができる。このとき、トロントダラーはカナダドルとまったく同じ条件で利用できる。お釣りが必要な場合はカナダドルで返金可能
B企業は、トロントダラーを利用して他の企業での調達や従業員への支払いを行うことができる。
また、企業が希望すれば、運営主体のトロントダラー・コミュニティ・プロジェクト社でトロントダラーをカナダドルに換金することができる。この際、企業が受け取ることができるのは、寄付に充てられた10%を差し引いた額(この場合90ドル)となる。この10%もまた、NPOへの寄付に充てられる。
(紙幣と両替場所)
トロント・ダラーは紙幣形式をとっており、偽造防止のためカナダ・ドルと同じ工場「カナダ銀行券印刷社」で印刷されている。その紙幣には1、5、10、20の四種類がある。
トロント・ダラーは市内に設けられている交換所でカナダ・ドルと交挽に入手することができる。カナダの大手銀行CIBCは、セントローレンス市場近くの支店でカナダドルをトロントダラーと交換するサービスを開始した。
○実験経過
トロント・ダラーは160年近い歴史のあるセント・ローレンス・マーケットの40以上の商店や市内の20以上のレストランを含む100以上のビジネスで使用することができる。そして、トロント・ダラー・プログラムに参加しているビジネス関係者は50〜100%の割合でトロント・ダラーの支払いを受けなければならない。
トロント・ダラーの流通量は当初一年間の貨幣供給量を30万トロント・ダラーと想定して用意された。最初の1ケ月に2万トロント・ダラーが購入され、1999年4月には4万5000トロント・ダラト、七月には6万トロント・ダラト、12月の時点で8万トロント・ダラー以上が流通している。
○課題
本来であれば、一度発行した地域通貨は、地域の内部で個人から企業へ、そしてまた個人へと循環し続けることが望ましい。しかし実際には、参加企業によっては、トロントダラーを受け取るとすぐさまカナダドルに換金してしまう企業も少なくない。

供託金の裏づけを確保したことで多数の地域企業の理解を得るのが容易だった反面、換金への対応や原資の管理など、運営主体側のオペレーションが重たくなっている。また、紙幣の印刷にコストがかかる。ある程度市民の間にトロントダラーが普及した時点で、低コストで持続可能な事業モデルへ転換することが必要。

地域通貨

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