2008年12月25日

北海道におけるブラックバス問題の論点


 私たちがブラックバスの問題について議論しようとする時、バスを持続的に利用したいと考える者たちによる「擁護論」は、多くの場合が感情論、責任転嫁、論理のすり替えなど理論的に破綻したものであり、それらによって議論は何ら結論へと導かれることのないまま紛糾してしまうことが多かった。当サイトにおいても「北海道におけるブラックバス問題にどう対応し、解決させるか」という点についてBBS(掲示板)やメールを利用して多くの議論の場を持ってきたが、やはりそれらも例外ではなく、この問題について議論することの難しさを痛感してきた。

 この問題を捉える観点は非常に多様で複雑だが、もともと北海道にはブラックバスを対象とする釣り場が存在せず、この魚をめぐる利害対立もなかったことなどから、もっともっと単純に考えるべきであったと思う。

 では我々北海道に住む者が今後この問題について議論する時、そこではいったい何が論ぜられ、考えられるべきなのか、ブラックバスの一掃宣言以降の状況を踏まえて考えてみよう。

 ブラックバスは2005年6月1日に施行された「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(通称:外来生物法)」によって、その飼育・運搬・販売・譲渡・輸入・野外に放つことなどが原則禁止となっている。したがってバスを北海道へと持ち込み、放流することは当然認められるものではない。またこの他、北海道内水面漁業調整規則でも移植が禁じられている。これらの法律に違反することは犯罪であり、当然のことながら違反者には懲役や罰金などの刑罰が科せられることになる。

 しかしながらこれらの法律には、バス釣りそのものを禁じた条項は設けられていない。では今後もし道内でブラックバスが確認された場合、それらを釣ることに正当性はあるのだろうか。

 北海道にはこれまで一般にバス釣り場となる水体は存在せず、行政は生息が確認された場合「撲滅」を目指した捕獲(駆除)を行う方針を打ち出しており、移植は法律で禁じられている。これまで生息が確認されたバスについては2007年5月までに駆除(撲滅)は完了しており、今後新たに確認されたならばそれは違法行為の結果である。したがって今後ブラックバスの生息が確認されたとして、その侵入経路、経緯に関係なくその存在には正当性がない。

 法的に見ればバス釣りそのものに違法性はないが、違法に放流されたバスを釣るということは「犯罪行為」の成果を利用することに他ならず、それが道義的に受け容れられないであろうことは、一般社会における常識だといってよいだろう。

 そうした意識のあらわれなのか、これまで熱心にバス釣りを振興し、擁護する発言を繰り返してきた「財団法人 日本釣振興会」の「北海道地区支部」からも、「道内ではバスの釣りによる利用をしない」との方針が2002年10月8日に打ち出されているし、個々の釣り人についても北海道内でのバス釣りやバスの移植について容認できないとする考え方が一般的であることが、釣り雑誌のアンケート結果などからもうかがえる。これらは「北海道にブラックバスはいらない」というコンセンサスが形成されていることの証左でもある。

 現在ブラックバスが生息しておらず、既に「バスはいらない」というコンセンサスが形成された北海道において、そこへの移植が法律に抵触するブラックバスの存在の是非や、それを釣ることの正当性を問うことなどはあまりにもナンセンスであり、時間のムダだ。

 したがって今後の北海道では───

「如何にしてブラックバスを防除するのか」

これ一点のみこそがこの魚について論ぜられるべき事柄であり、北海道への移植や利用などそのすべてにおいて可能性すら無く、北海道においては改めてブラックバスという魚の是非を問う必要もない。我々が考えなければならないことは「如何にしてブラックバスの侵入を未然に防ぎ、もし生息が確認された場合にはどのように排除するのか」という点に尽きるだろう。