―その1:「序章」(初稿)―
作:白夜衣神楽
暗雲たちこめる日であった。どんよりと重い空気に心までも沈んでしまいそうな、一般的にみれば"天気が悪くなりそうな″日。
"今にも そう…雨が降ってきそうな…″日……。
多くの木々が生い茂っていた。緑をのせて風のにおいがした。
東海大学湘南校舎。日本の大学の中でも屈指の広大なキャンパスをほこっているこの大学。
多くの若者がにぎわい学業を消化し、青春を謳歌していた。
その中でもエリート(?)とウワサの文学部、日本文学科の各研究室が、ここ3号館にあった。
キレ者の教授が多数いるこの棟はある種のオーラすらただよわせている。
時刻は15:10をまわったころ。そろそろ4限目の始業である。
口火を切ったのはこの研究室『上代ゼミ』のワンダーガールことサティであった。
「今日は何しよっか?」
「そうだねえ…」
答えたのはほとんどいつもまとめ役のカズト。
各人が卒論を完成させるための授業の場であるはずの研究室だが、ここ『上代ゼミ』通称六條院 奥ノ院 壱ノ社 第伍ノ部屋はもっぱら彼らメンバーの憩いの場となっていた。
ちなみに通称の方が長いため通称を知っている者はほとんどいない。
そんな中、事件は起きた。
ゴゴゴゴゴ……
「な、なんの音だ!!」
叫んだのは、いつも笑顔の池ちょん。
「じ、地面がゆれてる!!」
フジコが声をあげた。
「地震? まさかねぇ…。」
落ち着いて話すのは党陽譚。
「うわあ!」
一斉に起こる悲鳴。
一瞬、真っ暗になったかと思うと急に白い光が皆を包みこんでゆく。
「こ、これは!?」
シッキーがまわりを見回しながら言った。
「どうなったのよ!」
ヤマキがあとに続く。
「わからないよ。うわぁ」
bXが応え終わるが早いか再び強烈な光が包み込み、叫び声すらかき消していった。
「ここは……?」
笑ちゃんが起き上がりながら言った。
「どうやら異世界っぽ」
とアサヲくん。しかしすぐさま、
「なんですぐそうだと分かるんだよ」
と皆のツッコミを浴びる。
『上代ゼミ』一行は、見知らぬ土地にいた。
いや町といえばいいのか、とにかく今までとは違う雰囲気の場所だ。
行き交う人々も、現代人ぽくない。町並もどこか中世のヨーロッパの村を想像させる。
明らかに場にそぐわずオロオロとまわりを見回している若者の集団を見て、一人の男が近づいてきた。
「はじめて見る顔だな、迷ったのかい?」
「いや、あの、その……」
しどろもどろしていると男はこういった。
「ようこそ、アインの町へ。どこから来たのかはしらないケド。ここはオルカトの国、魔人スケガワが支配している国さ。」
『すけがわぁー?!?!』
明らかに怪しいよく知った名前を聞き、一斉にあげた『上代ゼミ』一行の叫びがこだましていた。
……………