惟光の名曲アルバム

いま、オキニイリのクラシック音楽のお話

IFUKUBE, Akira Lauda Concertata for Orchestra and Marimba
伊福部昭 オーケストラとマリンバのためのラウダ・コンチェルタータ
 伊福部昭というと、あぁ、ゴジラの音楽の人ね、というリアクションが多いように思います。実際、映画音楽作品数は記録級だし(『大魔神』だとか『サンダカン八番娼館』『わんぱく王子のおろち退治』『釈迦』など幅広く作品に音楽を提供しています)、コンサート用作品があるという印象はお持ちではないかもしれません。 ところが、どっこい、『交響譚詩』『日本組曲』『タプカーラ交響曲』『提琴協奏曲』など多くの作品があるし、芸大の教授として多くの日本人作曲家を育ててきた人です。著書には『管絃楽法』という大著もあります。
 この著書のタイトルからもわかるように、伊福部音楽の醍醐味はその音響にあります。悪口をいう人によれば「何を聞いても同じ曲」だそうですが、逆にそれが魅力なんです。追究されるのは音の響き、メロディとリズムとの響き、そういう点を楽しめると、伊福部音楽は常にアタマの中で鳴り響くようになって、日々を元気に過ごせるようになります。
 音の響きを追究する伊福部の個性は、ヴァイオリン協奏曲をはじめ、十七絃箏協奏曲、ピアノ協奏曲といったコンチェルト作品が多いことにも、そして独奏楽器のヴァリエーションの広さにもうかがえます。で、おすすめがこのマリンバ協奏曲。ピアノ協奏曲「ピアノとオーケストラのためのリトミカ・オスティナート」と双璧で、カラオケに行くと学生がよく唄う「みかんのうた」のようなノリで、アコースティックな大音量がコンサートホールに充満します。もっとも「みかんのうた」みたいにガサツじゃなくて、マリンバという楽器の音色のせいでしょう、まろやかです。マリンバのどんなに激しく打ってもまろやかな音色のハードなメロディ(ソリスト、四本のスティックを二本の手で使い分けてとんでもないハーモニーを生み出すんです。ナマで見るとそれだけで驚異!安倍圭子はすごい!!ちなみにわたしは改訂初演を聴きにいって圧倒されました)にバリバリとラッパがかぶさってコンバスと太鼓がドンドンズンズン腹に響くビートを刻むんですよね。これは原稿の締め切りがせまっているときに聞くよりひとり静かに座って聞いていると、聞き終わったころには興奮して、何をしても恐くないくらいに気が昂ぶって、人生が楽しくなります。
今、聴いているDISK 石井真木 指揮 新交響楽団
マリンバ独奏 安倍圭子
Recording:1993
 新交響楽団 伊福部昭 傘寿記念シリーズ』
   収録曲
 CD1 
 1:ラウダ・コンチェルタータ(1976年の作品)
 2:日本狂詩曲(1935年の作品)
 3:交響譚詩(1943年の作品)
 CD2
 1:管弦楽のための「日本組曲」(1991年の作品)
 2:シンフォニア・タプカーラ(1955/1979年の作品)
 3:SF交響ファンタジー
      指揮 石井真木(1−1)
         小泉和裕(1−2)
         原田幸一郎(1−3・2−2・2−3)
         小林研一郎(2−1)
           演奏 新交響楽団
東芝EMI:TYCY 5424・25


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