お遍路さんはリュックを背負い、凍える寒風の中、肌を焦がす炎天の下、びしょ濡れの雨の日も、辛苦を厭わず 歩いてゆきます。 一日歩けばヘトヘトです。 そんなお遍路さんの疲れた身体をいたわり、休められるのは今宵のお宿です。 そのお宿が、お遍路さんを温か く迎え、そして送り出してくださるお宿であれば、疲れもとれ、活力も一層よみがえってくるものです。 そんなありがたいお宿に巡り合われることを願い、お宿の選び方について考えてみます。
「旅はふれあい、宿はやすらぎ……」のようなフレーズを思い出します。 泊り客の気持ちを理解して対応してくれるお宿に巡り合うと、旅人の心はやすらぎますし身体の疲労も回復します。 お遍路の気持ちを理解し、お遍路さんを応援してくれるお宿は、なんといって も遍路道沿いに在る遍路宿や民宿です。 1泊2食付で料金も割安ですし、なによりも「四国遍路文化」を育み、支えてくれている縁の下の力持ちも遍路宿や民宿なのです。 洗練されマニュアル化された接遇応対や情報通信機器類が設置されているホテル・観光旅館・ビジネスホテル等もありますが、一般の宿泊客の一人として事務的に取り扱われるだけで、宿泊してもやすらぎの乏しい、寂しい睡眠となるだけでしょう。 それに高額の宿泊料金も無視できません。 気楽で観光気分の「札所巡り」さんならば観光旅館やホテルも選択肢の一つでしょうが、「歩き遍路」さんが疲労回復とやすらぎを求めるならば遍路宿や民宿での宿泊を お奨めします。
道中で出会う歩き遍路さんや、歩き遍路経験者などからお宿の情報を入手してください。 実際の宿泊体験に基づく情報ですので、案外にポイントをつき信頼できます。 また、不評な情報は聞き逃さないでください。 実体験ですが、不潔で悪臭が漂い、健康な方もそこに泊るだけで病気になりそうな宿(YH、松山市北条) ・ 汚れた破れ障子や破れ網戸、昔の布団部屋の様な薄暗く陰気で粗末な部屋、湯茶等も無く、生乾きの洗濯物を出発前に返却してくるような無神経で無頓着な民宿(土佐清水市)
・ 経営者の浅はかな偏見に因りお遍路さんを見下すがごとくの傲慢無礼を押し付けるさもしい宿(西条市小松)だってあるのです。 反対に、こころ温まる気づかいに合掌させて頂くような有り難いお宿も多くあります。 歩き遍路はお宿に恵まれますと翌日の歩きも快調です。 お宿は慎重に選ばれてください。
*注意、……驚くことですが、外見をそれらしく整えた親切ぼかしのインターネット上の遍路宿情報○○サイトとか道中で無料配布される小冊子(地図や宿情報)には 何と! これらのお宿が「優良なお宿として推薦され、紹介されている」のですからビックリ!!です。 ⇒ 親切ぼかしの情報操作に惑わされないようにご注意ください。
電話などで宿泊予約をする場合に「夕方3時半以降に宿にお入りください」とか「夕方は4時30分までに宿に入ってください」などと宿側の都合や条件を前面に出すお宿は敬遠した方が賢明です。 体験上だけの判断ですが、受付時間や着時刻などに条件(宿側の都合)を付けられたお宿での宿泊は、 殆ど全ての宿で不快な思いや後味の悪いものが残ってしまいました。 宿側の都合を優先させ、お遍路さんに余分な負担やプレッシャーをかけている傲慢な宿も少数ですが道中には在るのです。
又、 歩き遍路の道筋で歩き遍路さんに的を絞り声掛け(宿泊勧誘の意味です)をしている宿関係者が所々に見受けられます。 自分の知る範囲内では四軒の宿が道筋で待ち受けて声掛け勧誘しています。 その内の三軒は「評判のよくない宿」でありました。 歩き遍路さんを狙って声掛けしてくるお宿には疑いを持たれ、敬遠されることを勧めます。
しかし、団体専用宿坊もあるので注意してください。(団体専用宿坊 ⇒ 歩き遍路は宿泊の対象外で、アッサリと断られます。遍路専用地図に宿と表示されていても、最初から当てになどしないことです。(電話するのも止した方がよい。)*団体専用宿坊は、下表に記載していません。)
6番 安楽寺 | 温かく迎えてくれます。温泉です。お奨めの宿坊です。 | 26番 金剛頂寺 | 温かく迎えてくれます。食事も美味しく、お奨めです。 | |
7番 十楽寺 | 生ビールもあります。個室、お値段はやや高額です。 | 37番 岩本寺 | 迎えてくれます。素泊りの場合もあり。直前の確認必要。 | |
12番 焼山寺 | 春と秋のシーズンだけの営業(事前確認が必要)です。 | 38番 金剛福寺 | 春と秋のシーズン営業。団体中心。直前の確認必要。 | |
19番 立江寺 | 温かく迎えてくれます。 | 40番 観自在寺 | 温かく迎えてくれます。素泊り中心です。 | |
別格4番 鯖大師 | 温かく迎えてくれます。護摩供養は感動です。 | 58番 仙遊寺 | 温かく迎えてくれます。温泉です。お奨めです。 | |
24番 最御崎寺 | 温かく迎えてくれます。温泉です。 | 75番 善通寺 | 温かく迎えてくれます。温泉です。お奨めです。 |
お遍路を迎えてくださるお宿は、料金もサービスも精一杯に努力してくれていますので、特別に安くするには限度があります。 そうした中で、ここは安いな!と感じる料金のお宿は設備が悪いとか汚れている等の事情の外、経営者自身に起因する事由により評価・評判を落としている為に低料金で取り繕っているようにさえ思います。 実体験ですが、①30番善楽寺付近のお宿での真冬の実例です。 個室を確認したうえで予約したのですが、着いてみると宿側の一方的な都合で冷たい床の作業場での「詰め込み泊」に変更されていました。 お遍路ならばと、平気で騙すという傲慢な宿もあるのです。 ②瀬戸内に面した北条地区のお宿では、不快な匂いが充満し、天井も低く狭隘で窮屈、風呂の設備が劣る、犬が土間から室内に上がり込み極めて不潔、不愉快な応対を受け、宿選びの大失敗と悔んだ宿(YH)もありました。 ③真冬に泊った62番宝寿寺付近の民宿、女性経営者は自分の修行の為に営んでいるとの説明でしたがその態度は押し付けがましく傲慢無礼、通された部屋(追加料金を要求されました。)の寒いこと。 保温の為にズボンと靴下を履き、長袖シャツの上にウインドブレーカーを着用して布団にもぐり込み一夜を明かしました。 料金を払って部屋の中で野宿をした状況でした。 ……我慢も修行のうちと感じますが、お宿の方から忍耐と苦渋を押しつけられるのは如何なものでしょう。 でき得るならば避けた方が賢明です。
室内空調を使うにはコインが必要、TVを観るにもコイン、空調設備はあるものの操作スイッチが部屋から撤去されている、洗濯用洗剤を購入しなければ洗濯できない、ストーブの灯油をケチる、風呂場に水で薄めたシャンプーやボディソープを置くなど「ケチの権化」の様相を示すお宿もあります。 *洗濯にまつわる実例。”洗濯は無料”と説明しながら洗剤を¥200-で売りつける宿、乾燥機は30分で大凡乾くのですが「20分¥100-と設定し 追加で20分¥100-の計¥200-」を投入しなければ乾かないようにしているケチな宿も土佐の国にはあります。 お宿の方針や姿勢が何でもカネ・カネ・カネの応対ですので不快な思いをさせられます。
⑦送迎料を上乗せして請求するお宿もあります。
山中に位置し送迎サービスが無ければ不安や懸念を抱く地域に在るお宿の中には、「送迎サービス」をうたいながらその実態は有料で送迎をしているお宿も極めて稀にあります。 久万高原に向かう山中のお宿(砥部町)のなかには、宿泊料金に別途加算して一人当たり500~800円をガソリン代実費として平然と上乗せ請求しています。 送迎距離は1~2km程度だと思いますが随分と高い送迎料(3名であれば2,400円となる)を加算請求しています。 旅客運送業の資格を有していない旅館と思いますので、所謂「白タク」で平然と営業していることとなります。 交通の不便な地域で送迎を必要とする場合には事前に有料か否かの確認をしてください。 ちなみに、旅客運送業者でないものが有料で送迎することは業法違反です。
部屋に鍵がかからず、襖一枚だけで仕切られている部屋に通される場合もあります。 加えて宿側の都合で一方的に相部屋とされる民宿や旅館もあります。 防犯やプライバシー等には全く考慮をはらわずに、「いびき」や「隣室の話し声」などが煩わしくて不快な環境で安眠できない一夜を過ごさざるを得ないような宿もあります。 お宿を予約する場合に施錠設備の有無や個室の確認などにも注意して予約をされて下さい。 ただし、信じられないことですが、個室を予約しても宿側の都合を優先してお遍路さんとの約束などを一方的に無視しするお宿や地域も現実に存在するので注意してください。 実体験で約束を反故にされた地区は宇和島市三間地区や伊予郡砥部地区、西条市小松地区の旅館や民宿などが特に不快でした。
へんろ道には、コンビニや食堂などがほとんどありません。 あるとしても、何処で通りかかるかも不明です。 だから、お遍路さんは誰もが昼食の不安を抱いています。 こんなお遍路さんに、おにぎりやお弁当を持たせてくださるお宿もあります。 お遍路さんへの気
配りをしてくださるお宿に御縁を得られた方は感謝の心を添えてお泊りください。 ありがたい(有り難い)お宿です。 バス・タクシー利用の団体遍路や札
所巡り遍路さんが主に利用するお宿ではなくて、「お四国へんろ文化」を支えてくださっている歩き遍路さん中心の小さなお宿、そんなお宿でおにぎりやお弁当
の気配りを頂戴できることがあります。
お宿を営んでくださっているから、私達お遍路は風呂にも入れ、食事もいただき、布団で眠れるのです。 我慢させていただくのも修行です。 有り難いお宿にはより一層の感謝を添えて、そうでないお宿にも御蔭様の気持ちを添えて、感謝の気持ちでお泊りください。
*道中では、お宿等の品評を自慢たらしく話し、お宿の悪口を吹聴するなど心根の哀れなお遍路に出会うこともあります。 反面教師として受け止め、「似非遍路」に堕ちぬよう気を付けたいものです。
昔と変わらぬ本物の「歩き遍路」に関心のある方はこちらをご覧ください。⇒ お四国センター 直心(じきしん)
*「食事」や「飲み水」確保 … 現地情報(歩き始めの三日間)です。
歩き遍路さんは道順はもちろん方角や方向も全く判らぬままに未知で不案内な地域を歩き始めます。 遍路地図を持参していても歩き初めの慣れないうちは理解しにくく、急ぐ役にも立たないものです。 リュックを背負えばお腹も空きますし、喉もカラカラになってきます。 でも、歩き遍路に出かけられたばかりの貴方には食堂やお店が何処に在るのか?或いは通る道筋の何時頃に立ち寄れるのか?などの地域固有の現地情報等を知る由もないのです。 ここでは、歩き初めの三日間に的を絞って道中での「食堂の情報」や「飲料水の確保」についてのアドバイスと現地の情報を提供します。
アドバイス① 食堂やお店などは「無いもの」として認識してください。
アドバイス② 昼食を食べなくても生命に別状などありません。 むしろ、快調になります。
アドバイス③ 水分は補給してください。 飲料水の自動販売機はお遍路の道筋の所々にあります。
アドバイス④ 空腹で、喉が渇いて、どうにもならなければ道筋のお家に助けを求めてください。 お大師様が助けてくださいます。
アドバイス⑤ 修行の第一歩は、「我が身は我が身で護る」ことです。 失敗を繰り返さないようにしてください。
⇒「有るのが当たり前」と自分が勝手に思っていることを『虚』、「元々、なにも無い」のがこの世の『実』です。 だから『 有 り 難 い (ありがたい)』のです。
場所・位置 | 内 容 | 説明・アドバイスなど |
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2番極楽寺を経て1.5km地点 | 小さな食料品店があります。 | 遍路道の左側に在ります。見落としがちです。 |
3番金泉寺を経て0.2km地点 | 小さなうどん屋さんがあります。 | 見過しがちですが遍路道の左側に暖簾が見えます。案外と休業日が多いです。 |
3番金泉寺を経て0.3km地点 | パン屋さんのお店があります。 | 遍路道の右側に在ります。 |
3番金泉寺を経て0.8km地点 | 食堂があります。 | JRの踏切手前の三叉路左側に暖簾がみえます。案外と休業日が多いです。 |
5番地蔵寺を経て2.3km地点 | 小さな洋菓子とお店があります。 | 遍路道の左側に二軒隣接してお店が在ります。 |
10番切幡寺を経て1.8km地点 | 大きなうどん屋さんがあります。 | 信号のある交差点右向かいに「うどん亭八幡」があります。通常のペースで歩けば丁度お昼前後に付近を通りかかります。*ただし、団体最優先の対応で、個人やお遍路さんを排除することも多々あります。 |
10番切幡寺を経て2.0km地点 | 美味しい定食屋さんがあります。 | 信号のある交差点を東方向に0.2km位歩いた所に食堂「やまじゅう」があります。ボリュームもあり美味しいです。お遍路さんに優しくお奨めの食堂です。 |
川島潜水橋から2.5km地点 | 喫茶店があります。 | 信号のある交差点を渡り0.5km位の右側に喫茶店があり、軽食もあります。 |
11番藤井寺から12番焼山寺までの山道 | 道中には、何もありません。 | 11番藤井寺本堂横から焼山寺遍路ころがし13kmを歩きますが、その道中には「何もありません。自販機もありません。」ので覚悟して歩いてください。 |
11番藤井寺から6.6km地点の柳水庵 | 水場があります | 11番藤井寺から6.6km地点の柳水庵には飲料可能な水があります。ここで、必ず水を補給して残りの6.4kmを無事に歩いてください。 ☆水場に常に飲み水が流れているとは限りません。断水することだって有り得ますので、予備の水は必ず持参しておきましょう。 |
12番焼山寺境内 | 自販機があります。 | 自販機が設置されています。その中にはカロリーメイト(携行食料)も販売されています。又、時期によってはうどん店が開かれている場合もあります。 |
12番焼山寺を経て7km下った寄居地区 | スーパーマーケットやコンビニもあります。 | 12番焼山寺から鍋岩を経て7km歩いた寄居地区にはスーパーマーケットやコンビニもあります。 |
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