作法歩き遍路さんのマナー・手順など           

寺院でのマナー・手順


 山門で一礼   
○山門に入る時
 門内に入る前に立ち止まり、本堂あるいは正面に向って「一礼」してから、境内に入ります。

○参拝を終えて山門から出る時
 山門の境を越えた処で振り返り、本堂又は正面に向って「一礼」をしてから、退出します。

○意味合い⇒お大師様が、貴方を山門までお出迎えし、そして山門までお見送りしてくださっています。
 お大師様に感謝の気持ちを捧げる意味合いの「一礼」です。

 手や口を浄める  ○水場(手水鉢)で手や口を浄めます。 → 「水場の作法」を参照してください。

 装束などを整える 
○白衣等の乱れを整え、わげさをつけます。

○念珠・経本・線香・ローソク・納札等を準備します。 → 仏前に向かう心構えを整える意味合いです。

○へんろ笠・菅笠は着用したままで構いません。 → 境内では、菅笠を外さなくても構いません。 ただし、帽子等は外してください。

○不浄の場所では、わげさを外してください。 → 例) トイレ、食事中など。

 鐘楼で鐘を撞く 
○鐘楼に登壇し、鐘を撞きます。
 通常は「一打」です。 鐘を撞けない寺院あるいは時間制限を設けている寺院もあります。
 ……何と! 鐘を撞くのに、料金を請求しているお寺もあるんですヨ!! ビックリです。

○鐘は勤行を始める前までに済ませてください。
 勤行後に鐘を撞くことを「戻り鐘」といい、縁起が良くないといわれています。
 ちなみに、戻り鐘を撞いてしまった場合は、もう一度はじめから勤行をやり直してください。

 燈明(ローソク)を供える

○燈明立にローソク(通常1本)を立て火を点けます。 
 ローソクは、後に続く方のために燈明立の上方奥側に挿します。 手前にローソクの火がある場合は、無理をしないでください。 白衣の袖口が焦げたり、燃えたりする場合もあります。
 ⇒ 燈明を灯した後はガラス戸を閉めましょう(風が吹き込むと、炎が消えることもあります)。

○他人様の炎から点火しないでください。 縁起が良くないそうです。 種火が設けられている場合は、種火から点火してください。

○燈明立のローソクが一杯で、自分のローソクが立てられない場合には、消えているローソクを抜き取り水の中に捨ててくださって構いません。

 線香を供える
○線香(通常3本)に火を点け、香炉に挿します。
 後に続く方のために、香炉の中央部分に挿します。  ただし、他人様の線香で火傷しない場所を選んでください。

○白衣の袖口を焦がし跡を付けないように注意しましょう。

○線香やローソクは、バラケたり、折れたりして持ち運びに苦労します。
 右のような容器が、歩き遍路には便利だと思います。 ⇒下げ紐などは自分で便利なように付け換えます。

○線香やローソクは結構多量を消費しますので、途中での補給が必要です。
 コンビニ等での調達すれば、良品を安く入手できます。

○予備ライターの持参をお奨めします。 水濡れやガス欠も起こります。


○自分の都合だけで、線香三本をテープ等で巻いて挿している方が居ます。
 
その方々の線香はテープの箇所で火が消え、ゴミとなり醜態を晒しています。
  ⇒ 
他の方の迷惑です。 ゴミを挿すのは止めましょう

 納札を納める

(納札)




○納札に名前や祈願事などの所要事項を記して、「納札入」に1枚(本堂と大師堂に各1枚)入れます。
 納札は前夜に必要数を準備作成しておきましょう。
*日付は「 ○年 ○月 
 日」」で構いません。

○納札には遍路回数で色種類があります。
 白札=4回まで          緑札=5回から6回まで
 赤札=7回以上24回まで     銀札=25回以上49回まで
 金札=50回以上99回まで    錦札=100回以上

元々、遍路修行には「回数」も「位」も何も無いのです。
 
札所巡りの回数の多少にとらわれて、そこに何の価値があるのでしょう
 
納札の色など、他と比べて自慢し自己満足するだけのさもしい煩悩に他なりません。
 
納札の色などにこだわる必要はありませんし、そんな「とらわれる心」捨てることも遍路修行の一つなのです。

○遍路中にお接待を受けた折には、納札を布施者に感謝を込めてお渡しします。お接待への御礼・感謝文と考えてください。
布施者が受け取ってくださる場合にのみ、納札をお渡しください。
お地蔵様や遍路休憩所での供物やお接待を頂戴した場合、御礼に納札を置かれているお遍路さんも多くいらっしゃいます。

○納札入の中から、金札や錦札を捜している人が居ます。
 ⇒金札を納めた方も、錦札を納めた方も各々に
「業」を背負って巡っています。
 納札を納めた方の
「背負っている業」を、ご自分が背負っている「業」の上に更に乗せて人生を歩んで行かれる覚悟であるならば、他人の納めた金札や錦札を捜して拾ってゆけばよいだろうと思います。
 
 他人が納めた納札を捜し拾うことなどは、止めにした方が良いと思います。

○「
札所巡り」と「歩き遍路」はその中身が全く異なります。 立ち寄る寺院がたまたま同じで、遍路装束を同じ様に身に着けていたとしても、その修行の路の厳しさには雲泥の開きがあり全くの世界です。
 札所巡り
霊場巡り」を、数多く回数を重ねたとしても唯一度の歩き遍路」には遠く及ばず比べる術も無いと思います。 「札所巡りの金札や錦札」などは一瞥するだけで充分ですし、それなりの物として取り扱えばそれだけでよいのです。 そんな物よりもむしろ歩き遍路の道中で出会う「歩き遍路の白札」にこそ敬意を払われ、大切にされることをお奨めします。

 納経所での記帳

(納経帳)





(朱印白衣)
○仏前に進み礼拝のうえ、一般的に本堂では「開経偈」・「懺悔文」・「般若心経」・「御本尊真言」・「光明真言」・「大師宝号」・「廻向文」をお唱えします。大師堂では「開経偈」・「懺悔文」・「般若心経」・「光明真言」・「大師宝号」・「廻向文」をお唱えします。

○「納経」の意味合いは時代により変化しています。
 昔は、「写経文を納めること」を指しましたが、現在では、仏前で「般若心経を唱えること」あるいは「納経所で朱印料を支払い墨書朱印を頂くこと」を指す場合も多いです。

○納経を済ませた後に、納経所を訪れて「納経帳」に墨書と朱印をいただきます。
 ⇒ 納経の証として
形式化されている記帳行為は「有料」なのです。
 ⇒ 納経帳などに記帳行為を受けるか否かは参拝者の自由です。

寺院の納経所等で思いもかけずに傲慢無礼な態度や不愉快な仕打ちに遭遇することも多々あります。僧侶を含め寺院側の方々も十人十色なのですから、反面教師として受け流してください。⇒寺院側の対応や姿勢に疑問を抱き、記帳行為を受けない方々も数多くいます。

歩き遍路を体験したことの無い僧侶や職員さんがほとんど大多数ですので、「歩き遍路」や「お接待文化」などを理解できないのが当り前なのです。⇒四国霊場の札所寺院だから、僧籍に携わっているからといって、勝手にイメージを抱き、それなりの期待感を抱いたり、根拠も無く神聖視したりするのは止めにしてください。→寺院事業あるいは僧侶という職業従事しているだけ普通の方々なのです。

納経所に於いて、稀にですが丁寧に心を添えて墨書御朱印をし、手渡しで返却して下さる方も居ます。そのような方々には感謝の念いを捧げてください。そんな寺院に巡り合えた貴方は果報者なのです。⇒殆んどの寺院ではスピーディ且つ慣れた手続きで事務的に処理するだけの受渡作業です。

○必要な方は「御軸」や「朱印用白衣」(左下写真参照)にも墨書と朱印をいただきます。

○志納金(
記帳押印料金)として、納経帳300円、御軸500円、朱印用白衣200円を支払います。
 ⇒ 
随分割高な料金です。

○団体バス等で納経所の混雑が予想される場合、順序を変えて記帳・朱印を先に済ませても構いません。

○納経所窓口は、
朝7時から夕方5時までしか受け付けてくれませんので注意が必要です。

○記帳・朱印の毎に、「御影(おすがた)」を頂けますので、御影入れ等に保管してください。

【納経帳の説明】
○納経所では
記帳担当者が事務的・機械的に実に手早くスラスラと筆を滑らせ、朱肉をポンポンと押し、手際よく返却してくれます。 なお、墨書は右側上部に 「奉納」等の文言、中央に「御本尊」の表示など、左側に「寺の名前」が記されます。 朱印は右側上部に「四国第□□番」の印、中央部に「御本尊に係る宝珠や梵字」など、左側下部に「寺印」が押されます。

二回目以降の記帳・朱印は、朱印のみを重ねて押印(左写真参照)します。 志納金(朱印押捺料金)は300円で一律です。

特筆すべき「納経」があります。 右側の記帳をご覧下さい。 
刷毛筆で墨書する納経で、スラスラとは書けない念の入った墨書です。 記帳するのに1分以上の時間を要し簡単には書けないそうです。 ちなみに、この納経は3番金泉寺の奥の院「愛染院」でしか記帳していないそうです。 中央の文字は不動明王の真言の「カンマン」の文字で、住職ご自身が受付し墨書してくれます。 機会があれば、是非とも納経されることをお奨めします。

〇納経帳への「墨書朱印」の意味合いって…?
新型コロナウィルス騒動の折、大多数の寺院で納経所閉鎖措置がなされました。 納経所に墨書朱印を受ける意味について、従前は「御本尊に参拝し写経等を納めたことの
」として権威付けられ説明等もされてきました。 然しながら、新型コロナ騒動に伴い寺院側の判断納経所等の閉鎖措置がなされたということは、従前の“”の権威付けを自らが放棄し、“”が絵空事の虚しい作り話であったことをさらけ出してしまった、のではないのでしょうか?
これからは冷静に惑わされることなく、納経帳等への形骸化した墨書朱印を見直してみることも必要かと思います。

 昔と変わらぬ本物の「歩き遍路」に関心のある方はこちらもご覧ください。⇒ お四国センター 直心(じきしん)

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水場(手水鉢)でのマナーと手順

水場(手水鉢)での手順や作法等について説明します。 この作法は、「神道」でも「茶道」でも共通です。
①手水場に立ち寄り、右手に柄杓を持ち、柄杓に水を汲みます。 

注意、柄杓に汲みとった水量で以降の全ての手順を終わらせますので、適当な水量を柄杓に汲んでください。
②右手に持つ柄杓の水を左手に注ぎ、掌を洗い浄めます。
③柄杓を左手に持ち替え、右手に柄杓の水を注ぎ、掌を洗い浄めます。
④再度、柄杓を右手に持ち替えて、左手掌に水を注ぎ溜めます。
⑤左手掌に溜めた水で、口をゆすぎ浄めます。

注意、柄杓に唇を直接に触れてはいけません。 必ず、掌に溜めた水を使ってください。

⑥口をゆすいだ水は、水の落し場に流し捨てます。

⑦柄杓の柄を両手で持ち、柄杓を立てながら、残りの水で柄杓の柄を静かに流し洗いします。

注意、柄杓の残り水は、必ず水の落し場に流し捨ててください。 絶対に、水溜め(手水鉢)へ戻してはなりません。
⑧柄杓を静かに元の場所に戻し、自分の手拭いで手の水滴を拭います。

⑨柄杓が乱雑にならないように、感謝の気持ちで整えましょう。 ご自分のこころも少しだけ浄らかになりますし、後に続かれる参拝者のこころも和やかになるでしょう。
その他の留意点 ・柄杓などに、貴方の唇などを直接に接触させないようにしてください。 →不潔です。 それに、どんな方が先に使われたかも不明です。 清潔第一です。 貴方自身の健康を護るためにも、口で直接触れないようにしてください。

・手拭いがお接待されている場合もありますが、ご自分の手拭いで手や口の水滴を拭ってください。

・飲み水に適さない水場(手水鉢)もあります。 特に屋根や囲いの無い水場では十分に安全を確認をしてください。


 昔と変わらぬ本物の「歩き遍路」に関心のある方はこちらもご覧ください。⇒ お四国センター 直心(じきしん)

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仏前勤行次第  …… 読経等の手順です。

仏前(本堂・大師堂)での勤行手順

流れ

簡略

大幅に簡略

本来の形

本堂(大師堂)に
進み、拝礼合掌。
本堂(大師堂)に進み、拝礼合掌。 本堂(大師堂)に進み、拝礼合掌。 本堂(大師堂)に進み、拝礼合掌。
前句 「御本尊様(大師堂では御大師様)にご法楽を捧げて
「戒名○○」ならびに先祖代々の菩提と家内安全を
祈り奉る」と私は唱えています。
祈願文を唱えることもあります。
開経偈 一回 一回 一回
懺悔文 一回 一回 一回
三帰 一回 弟子某甲の後に自分の姓名を付け加えて唱えます。 三回 弟子某甲の後に自分の姓名を付け加えて唱えます。
三竟 一回 弟子某甲の後に自分の姓名を付け加えて唱えます。 三回 弟子某甲の後に自分の姓名を付け加えて唱えます。
十善戒 一回 弟子某甲の後に自分の姓名を付け加えて唱えます。 一回 三回 弟子某甲の後に自分の姓名を付け加えて唱えます。
発菩提心真言 三回 三回
三摩耶戒真言 三回 三回
般若心経 一回 一回 一回
御本尊真言 三回(大師堂では省きます。) 三回(大師堂では省きます。) 七回(大師堂では省きます。)
光明真言 三回 三回 七回
大師宝号 三回 三回 七回
祈願事項 無言で祈願しています。 無言で祈願しています。 無言で祈願しています。
廻向文 一回 一回 一回
拝礼合掌 拝礼合掌 拝礼合掌 拝礼合掌


勤行の形式や順序にこだわらなくても構いません。
 お遍路の原点は「
お大師様の巡られた足跡を歩いて辿りつつ、清浄心に立ち還る修行」ことです。 歩いて巡る道中の途中には札所寺院も散在しますので立ち寄ります。 お遍路さんは「僧侶という職業」に就いているお坊さん達とは違いますので、仏様への敬いと感謝の気持ちを持たれていれば勤行の形式や順序にこだわらなくても構わないと思います。
 ただ、
勤行は「読経」のですから、声を出して読むことが大切です。 読経の行ですから、意味など判らなくても声を出すことです。 意味を考えながら読むと「読書」になってしまいます。 


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 昔と変わらぬ本物の「歩き遍路」に関心のある方はこちらもご覧ください。⇒ お四国センター 直心(じきしん)


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