学食
カレーライスを載せたトレイを持って、真木は学食に入った時から目をつけていた佐々木の斜め後ろの席を陣取る。
佐々木の正面に座っている軽そうな彼女の様子には目もくれない。
佐々木の肩が楽しそうに上下しているのとか、ふと耳のあたりに伸ばした指先とかを気にしながら、漫然とカレーライスを口に運んだ。
咀嚼と嚥下を繰り返しながら、なんだか不毛な自分が嫌になる。
――いや、嫌になるのは佐々木が女といることだ。そうでなければ堂々と正面の席に座れただろう。講義の愚痴でも、レポートの期限でも、昨日の夕飯の話でも、なんでも、そういう他愛のない話ができて、午後の授業が楽しくなったろうと思う。
でも、
喉に詰まりそうな人参を水で流して、そのコップをわざと音をたてて置いた。
でも、佐々木が惚れっぽいのは今に始まった話ではない。
高校時代から数えて、何人目の彼女か、たぶん片手には余るだろう。新しい彼女ができるたび、紹介されたり、偶然見かけたり、結局その彼女の姿を見ることになるのだ。彼女と一緒にいる佐々木の姿と一緒に。
コップがたてた衝突音は、学食の喧騒の中にまぎれてしまった。真木の耳にもあまり届かず、目の前の彼女も気づいた様子はない。
それでも、斜め前の黒い髪が何かを察知したように振り向いた。
ちょっと動揺して、ちょっと自信を深くして、真木は軽く笑って手を上げた。
答えて、佐々木も指先をひらひらと振る。
その様子を見とがめた彼女が、佐々木の指を何の気なしにつかんで、真木に視線を向けた。乞われて、佐々木が彼女に向きなおる。
ああ、こんなことも今まで何度あっただろう。
愚にもつかない溜息をカレーと一緒に飲み込んだ。
カレーの皿とトレイを片づけた帰り、不意に腕を掴まれた。
「真木、来てたなら声ぐらいかけろよ。」
悪びれない、懐こい顔をして佐々木が止めたのだった。
彼女は、と視線を巡らすとすでにその姿はなく、佐々木から直接に紹介されなかったことに、真木は安堵する。
「邪魔しちゃ悪いかな、と思って。」
「なにいってんだよ。」
引きとめて、どうやら正面の席に座れということらしい。
そこはさっきまで佐々木の彼女がいた場所で、一瞬躊躇して、すぐに腰を落ちつけた。
「真木レポート終わった?」
「レポートって、社会学か?いやまだだけど。」
「そうかー実は俺もなんだよね。あれって、〆切いつだったっけ。」
「来週、たぶん。」
「そうかー。真木さー、もし暇だったら、一緒にやんない?レポート。」
「え。」
佐々木の中で、彼女と友達は等価だろうか。
「暇だったらでいいんだけど、なんか資料がうまく見つかんなくてさ。」
佐々木の中で、彼女と等価の友達が、佐々木にたくさんいる友達の総称ではなくて、真木のことなのだとしたら。
「いつ。」
「いつでも。真木はいつがいい?」
パッと顔を輝かせた佐々木が、もし真木のことをそういう友達だと思ってくれてるなら。
少し考えて、意地のわるい気持ちでその日を指定した。
「じゃあ、週末。」
学部の違う彼女と佐々木は、週末に必ず会っているから。断るか、困るかと真木は思った。
「おっけ。じゃあ、土曜な。」
それなのに、佐々木があっさりと承諾するので、コップの音に佐々木だけが気がついた時のように、ちょっと動揺して、ちょっと自信を深くして、真木は笑った。
祝20000hits&サイト1周年ということで!
moriさんからいただいてしまいました!!わたし今なら飛べる!絶対飛べる!萌えの翼で!!
だだだだってこの真木可愛すぎる!この…っにんじんちゃんめ!キャロット!!(何)
諦めムードで悶々しちゃう。不毛と知りつつも結局佐々木ウォッチングしちゃう真木が真木すぎてどうにもたまらんです。
moriさんの手にかかると自キャラクタでさえ超もえっこになれる奇跡。これがmoriさんクオリティなのか…!
moriさん弟子にして下さい。
佐々木は女泣かせでもありますがこりゃあ真木も相当参りますよね。これまでの付き合いの中でもこういう場面が数限りなくあったんじゃなかろうか…これまでいったい何回真木に〔佐々木の彼女→落ち込む→でもやっぱり佐々木たまらん好きだ〕の無限ループに嵌らせてきたんだ!萌えるじゃないか!
と自作には到底感じなかった怒涛の萌えを感じて脳内ピンク真っ盛りです。
この超素敵プレゼントのおかげで今後の目標を新たにしました。
目標:佐々木をいつか絶対アワアワさせてやる
明日への活力まで湧いてきました…!!いつもわたしを信じられないほど萌えたたせてくださりありがとうございます!!!
moriさんの素敵サイトはこちら! →mori-no-hanashi
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