2人分のマグカップには淹れたてのチャイ。
ジンジャーとアッサムのブレンドは、最近の僕と彼のお気に入りだ。
先月僕らに届いたチョコレートは去年を更に上回る量で、当分の間─僕らが音を上げなければの話だが─ティタイムを楽しませてくれるだろう。
僕は壁にかかった時計に目を走らせ、玄関のドアに視線を移し、また時計に目を戻した。多分もうすぐ(彼が一週間前に自分で言ったことを覚えているかどうかは甚だ怪しいものだ)此処に帰ってくる時間だ。
僕の食へのこだわりを彼はことあるごとにからかうけれど、僕に言わせれば彼が無頓着すぎる。ただでさえハードなスケジュールなのにぽんぽんと予定を追加するものだから、普段の彼の食生活はまったく目も当てられないものになっているのだ。
やれカナダでトライアスロンだの西海岸でヨットだの─いったいどこにそんな体力があるやら!─運動音痴の僕には到底及びもつかないようなその溢れんばかりのバイタリティは尊敬するけれど、そんな彼にも知ってもらいたいことがある。
時間を気にしないで二人でゆったり摂る朝食だとか、帰れない夜に入れてくれる電話だとか、
─久しぶりに重なった互いの休日に二人で飲むお茶の美味しさだとか。
「ただいま!」
声を聴くのは3日ぶり・顔を合わせるのは2週間ぶりの彼は、なんだか少しやせたような気がする。でもきらきら輝くような笑顔は少しも変わらなくて、彼のオフに合わせて僕もオフが取れるように必死で策を巡らせた苦労もあっという間に吹き飛んでしまう。
「なんだか久しぶりですね、こうやって顔合わせるのは」
敬語は僕の癖みたいなものだ。相手がどんな人であろうと、たとえ彼のような長年の付き合いでも、この話し方以外ではうまく喋ることができない。
そうだね、とにこにこしながら彼はマグカップを片手に自室へと入っていく。それが少し不満で、僕は閉まったドアに向かって「行儀が悪いって言ってるのに…」とぶつぶつこぼしたが、彼はすぐに部屋から出てきた。
…大きなトランクを持って。
「ああ美味しいお茶だね!ねえところで僕はこれからハワイに行ってくるよ。新しい企画でね、サーフィンを習うんだ」
僕はしばらくぽかんとして口がきけなかった。
「サーフィンて僕、自己流以外ではほとんど経験がなくて。ちゃんとできるかなあ。でも興味はあったしね、すごく楽しみだよ!」
部屋に漂うジンジャーの香り。宝石みたいな6つのショコラ。
「ひょっとして君は今日オフなの?いつまで?」
部屋に射しこむ春の陽射しと洗いたてのシーツ。冷蔵庫にはたくさんの食材。
「もしできるなら…一緒に来てくれたら僕はすごく嬉しいんだけど」
開けたままだった口をようやく閉じて、僕は長い長いため息をついた。
3月のハワイには、何を着ていけばいいんだろうか。



芸能BLみたいなノリを目指して…みました
なんていうかガチャ●ンとム●クはもう公式ですよね。わたしはムッ●×ガチ●ピン派です
理屈屋インドアセンシティブ敬語攻×天真爛漫奔放アウトドア受、みたいな…
…純粋にこの2人が好きな方本当に申し訳ありませ…