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【奥州藤原氏の陰謀!!】 第2話:反攻
第2話:反攻


兄弟同士の言い争いのあった日の翌朝、泰衡は家臣一同を集め朝議を開いた。

藤原忠衡

「兄者、みなを集めて何の朝議を始めるつもりじゃ!!しかも義経殿がこの席に呼ばれていないという事は義経殿を討たんと言う腹づもりか!!俺はこんな朝議の決定には従わんぞ!!」

藤原泰衡
「黙れ忠衡!!奥州の国王は私であり、この朝議での決定は絶対なのだ!!もしこの朝議に意義を申し立てるというならば勝手に出て行くがいい!!」

藤原忠衡
「義経殿を除いての朝議、内容も知れてるわ!!皆もこんな茶番に付き合う必要はないぞ!!解散じゃ、解散じゃぁ〜!!」

藤原泰衡
「ええい、朝議を乱すものをつまみ出せ!!安藤道綱、忠衡をつまみ出すのじゃ!!」

安藤道綱
「御意。」
「忠衡殿、殿のご命令なれば失礼されよ。」

藤原忠衡
「認めんぞぉ………。」

………。

藤原泰衡
「…では、場に合わぬ者もいなくなった事ゆえ朝議を始めたいと思う。まずは鎌倉方からの義経追討令への対処とその後の対応についてだがどうすべきか問いたい。」

安藤道綱
「殿のご意見に逆らう事になるかも知れませぬが私は忠衡殿同様、義経公を討つを良しとはしません。亡き大殿の遺言通り義経公は擁護し続けるべきでありましょう。」

藤原泰衡
「…で、擁護してどうしようというのだ!!」

安藤道綱
「そ、それは…。遺言通り義経公を中心に力を合わせるべきでありまして…」

藤原泰衡
「そんな中途半端な意見で今後の方針が決められるか!!」

安藤道綱
「ぎょ、御意。申し訳ございません。」

藤原泰衡
「他には!!」

河田次郎
「へへへ、やはり殿の申す通り義経公を討ち取り、その首を頼朝公に献上すれば頼朝公の奥州へのお疑いも解け万事上手くいくかと…。」

藤原泰衡
「ふむ…。他に!!」

………。

藤原泰衡
「他に意見はないのか!!尾藤泰政はどうじゃ!!」

尾藤泰政
「あ、いや、それは…。」

藤原泰衡
「何じゃ、奥州が滅ぶかどうかの瀬戸際なのにろくに意見も出せんのかお前達は!!兄者は昨日の意見と変わらぬのか?」

藤原国衡
「うむ、やはり今まで通り義経追討は何かもっともらしい理由をつけて先延ばしにすべきであろうな。」

………。

藤原泰衡
「他にないのか!!」
「………。他になければ、私が決を下すぞ!!」

………。

藤原泰衡
「いいか、鎌倉方からの義経追討令に対する方針は………。」

「義経殿擁護とする!!」

一同
「………!?」

藤原泰衡
「いいか、鎌倉方は院宣を得たと追討令に書いてきているがそんなことが実際にあると思うのか、お前達は!!」
「いいか、朝廷は平家、源氏と続く武家政権の台頭により、今までの政治権力を武家側に奪われ苦々しく思っているはずじゃ。そんな朝廷が源氏による武家政権による武力統一などというおごる平家の再来などを認めるはずがあるまい。鎌倉方が院宣を得たなどと言うことはまったくのうそじゃ。」
「加えて言えば、今のいままで我々の手によって義経公を葬りさるようしつこく言い続けて来たということは、裏を返せば頼朝公は義経公が恐ろしくて仕方ないのじゃ。なぜなら義経公は多勢に無勢で平家を壇ノ浦にて討ち滅ぼした戦上手であり、かつ朝廷からの信頼も厚い。頼朝公中心による武家政権の統一にとって義経公は邪魔以外の何者でもなく反頼朝派の旗頭に祭りあげられる恐れがあるからじゃ。」
「つまりは、義経公と力を合わせて全国の反頼朝派に呼びかければ鎌倉方に対抗する事も可能というわけじゃ!!」

一同
「おおお!!」

藤原泰衡
「しかし、今の現状では鎌倉方の勢力に対抗する事は出来ても、鎌倉方を倒す事など出来まい。ゆえに…」

安藤道綱
「と、殿。殿のご意見にはまことに感服つかまつりました。しかし、鎌倉方を倒すなどと…それでは大殿の決して争わずというご意志にそむきませぬか?」

藤原国衡
「確かに父の遺言にそむくことになるぞ。義経公と力を合わせて防げば足りるというのであればそこまで考える必要もあるまい。」

藤原泰衡
「………。今は………な。しかしよく考えてもらいたい。確かに大殿の遺言は絶対であると思うが、いったい義経殿はいつまでこの奥州にいるというのだ。」

一同
「!?」

藤原泰衡
「確かに義経殿が生きている間はよいかも知れぬ。しかしいついなくならぬとも限らんのじゃ。大殿でさえ…。」
「ゆえに、今のうちに奥州が更なる力を蓄え、独立王国としての地位を確立する為には…今、鎌倉を倒さねばならぬのじゃ!!ゆえに、今日の朝議には義経殿は出席していない。わしが鎌倉方の要人をこちら側に引き抜くよう依頼し昨晩ひっそりとこの平泉をでていったのでな…。」

尾藤泰政
「殿もお人が悪い。そうならそうと忠衡様にご説明差し上げればよいものを…」

藤原泰衡
「いや…、あえて朝議の場を乱す必要は別にあったのじゃ。」

一同
「???」

藤原泰衡
「のう、河田次郎。貴様が頼朝とひそかに連絡を取っている事はすべて調べがついているのじゃ!!」

河田次郎
「!!!」

藤原泰衡
「安藤道綱、河田の首を刎ねい!!」

安藤道綱
「御意、河田次郎神妙にせよ!!」

河田次郎
「く、くそうぉぉぉ…。」

………ぐわぁぁぁ!!

………。

藤原泰衡
「…謀反人も成敗した事ゆえ、安藤道綱、忠衡を呼んでまいれ!!」

安藤道綱
「御意、お待ちくだされ。」

………。

ドカドカドカドカ…ガラ!!

藤原忠衡
「あ、兄者ぁぁぁ!!」

藤原泰衡
「忠衡、すまんな。昨晩色々考えてみたのだが、よくよく考えてみれば義経殿を滅ぼせば次はわが身…と思ってな。それでひそかに善後策を考えてみたのじゃ。」

藤原忠衡
「あ、兄者ぁぁぁ…。そうじゃ、義経殿あっての奥州じゃぁぁぁ…。」

藤原泰衡
「…では、先ほどの続きをするとしよう。」
「確かに鎌倉を滅ぼすためには鎌倉方の要人を引き抜いて力を弱める必要はあるが、いくら義経殿が説いたといえ簡単に寝返るものでもあるまい。ゆえに、我々も院宣をうける必要があるわけじゃ。鎌倉討伐の為の勅許がな!!」

一同「!!!」

藤原国衡
「しかし…、先ほど言っておったが、鎌倉を倒しても我々が力をつけるのは、やはり朝廷にとっては苦々しいことではないのか?我々も武家ぞ?」

藤原泰衡
「ふふふ…確かに兄者の言う通じゃ。しかし…勅許は得られるのじゃよ。皆のものよいか、少なくとも朝廷は鎌倉方を苦々しく思っており、その力を弱めたいと考えているはずじゃ。…となればそれと争う勢力がいる。つまり我々の存在が必要となってくる訳じゃ。これは今までの源平の争いの歴史を紐解けばわかること。しかしだ、今の奥州には鎌倉まで攻め込むだけの力はないゆえ、鎌倉方の力を弱める必要があるわけじゃ。奥州官軍、鎌倉賊軍という形でな…。これで力関係は対等以上になる。それに義経殿がたつとなれば、伊予周辺の海軍も味方につけられるしな…。」
「どうじゃ、これでも父の遺言に反し争うはまずいか?」

一同
「異議なし!!」

藤原泰衡
「…反対はなしじゃな。なれば、鎌倉への反攻へ向けて更なる準備をせねばなるまい…。まずは密偵の役回りじゃが………尾藤泰政!!」

尾藤泰政
「はっ!!」

藤原泰衡
「おまえは鎌倉に潜伏し常にその状況を報告せよ!!」

尾藤泰政
「御意!!」

藤原泰衡
「つぎは朝廷から勅許を頂く役回りじゃが………」

藤原忠衡
「兄者、その役目、俺に任せてくれ!!必ず勅許を受け取ってくるゆえ!!」

藤原泰衡
「し、しかしな…。勅許を得るためにはもう少し弁の立つものの方がよかろう。おぬしは口下手じゃからのぉ…。」

藤原忠衡
「いや、それでも俺に任せてくれ。失敗したときはいかなる罰も受けるゆえ。」

藤原泰衡
「…仕方ないな。では、勅許を受ける際に、私が藤原基成公の血筋を引いている事も伝えてくれ。奥州藤原氏は俵藤太の武家の嫡流じゃが、基成公は正当なる公家の血筋ゆえ仮に奥州が力をつけて鎌倉に変わる立場についたとしても公家の血筋であれば公家が武家を支配する体制を取り戻せるという事を説明してな…。」

藤原忠衡
「わかった、兄者!!」

………。

それから泰衡は鎌倉反攻の為の指示をおのおのに伝え、勅許が得られれば行動を起こせるところまで準備が整えられていった。


第3話に続く